ありがとう

目が覚めて、隣に温もりがある幸せ。


特別な日の朝。


腕を伸ばして隣にある筈の温もりを探す。
さが....


居ない!?


勢いよく半身を持ちあげ、向こうの部屋を覗き込むとソファーに白い足が見える。


「起きてたの?」
寝起きの第一声は、掠れて弱々しい。
「ごめん、起した?」
起きてそれ程時間が経っていないようで、化粧気のない表情で緩く髪を束ねた彼女がひょっこり顔を出す。
素顔のせいか、いつもに比べてあどけない表情は無防備でグッと来る。


あぁ、何故君はそんな遠くに居るんだい?


少し毒づいて、のっそりと立ち上がる。


「ね、今日は何の日か知ってる?」
拗ねた表情を隠さず、君に歩み寄る。
「なに?なんで怒ってるの?」
「別に?怒ってないけど」
ただ、拗ねてるだけですよ。


「知ってるよ、おめでとう。誰よりも早く私が言いたかった」
柔らかく笑う君。
「同じ時代に生まれてくれてありがとう。歌を歌ってくれてありがとう。」